グランガチ
Grangach

 
容姿・特徴 半分は魚、半分は爬虫類の鰐のような怪物。
出典 アボリジニの伝承
解説 アボリジニの伝承に登場する、「魚の王」の別名を持つ強力な力のある水の中の精霊。
深い沼の底に棲んでおり、魚に似た鱗は緑、紫、金色に輝いていて目は星のように光り、鰐似た鋭い牙が生えている。
トーテム(祖霊)である精霊のため無益に生き物を襲ったりはせず、昼は浅い水場で日光浴をし、夜は緑に澄んだ沼の底で過ごしている。
その背にはギザギザした傷があり、そのせいで他の鰐の背もギザギザになった逸話がある。

ある日、素晴らしい漁師だったフクロネコのミルラガンが、魚の中で最も大きく最も強いグランガチを仕留めようと功名心を燃やしていた。
槍では水の底に届かず、ミルラガンは毒の樹皮を水に投げ入れグランガチを水面におびき出そうとした。しかし水を汚染するほどの毒には足りず、ミルラガンがもっと多くの樹皮を探しに行った隙にグランガチは沼の底を切り開き他の泉へ逃げた。この時掘った通路は後に川となった。
グランガチは幾度か表面に出て捕まりそうになったが、ついに多くの一族が住む深い湖の底に逃げ込んだ。
そこでミルラガンは仲間の水鳥を呼び集め、水中からグランガチを引き上げるように言った。しかし全力をかけても引き上げる事が出来なかったため、水鳥はグランガチの背中の肉の一部だけを引き千切った。
ミルラガンは鱗のついた見事な肉に満足し、仲間でそれを食べるとそれぞれ故郷に帰って行った。

この時グランガチが掘った道や穴は、今でも川や洞穴としてオーストラリアの大地に残っているという。
参考文献 幻獣ドラゴン(新紀元社) オーストラリアの民話(株式会社ぎょうせい)

文責 : 白蓮
イラスト : くに