サラマンダー
Salamander

 
容姿・特徴 火中に住む斑点のあるトカゲないしサンショウウオ、火中に住み繭を出す虫、火の中や空中に住む美しい女性など諸説がある。
出典 『博物誌』『語源』、錬金術他
解説  スイスの錬金術師パラケルススが四大元素の一つの火の精霊に与えた姿より派生。地球内部の火の中にすみ、焼けぬと信じられている火の精。火の中にあっても燃えないことから、義人と神の人のシンボルとされ、紋章にも使われている。
 雌雄の別が無く、子を産まない。
 頭と四肢を切り捨て、臓腑を抜いた体を蜂蜜につけておくと催淫剤になるとか、黒焼きにすると良薬になるなどいう説もある。
 プリニウスは、『博物誌』第10巻の中で「大雨のときにしか姿を見せず、晴天の時は消え失せる。きわめて冷たいので、氷のように火に触れただけで溶ける」と述べている。また毒性も強く、「口から乳のようなよだれを出し、人間がそれにちょっとでも触れると、体中の毛が抜けてしまう。そして、触れた部分は腫れて湿疹になる」という。
 同書第11巻では、キプロスの銅を溶かす炉の火の中に住む「ピュラリス」または「ピュラウスタ」という4つ足で翼のある虫について述べている。この生物は、蠅くらいの大きさでつやつやしたブロンズ色をしており、炎から飛び出すと一瞬で死んでしまうという。のちに、このピュラリスと混同され、火の中に住むトカゲ、サラマンダーのイメージが生まれたのではないかといわれている。
 セビリアの学者イシドルスの『語源』には、一度にたくさんの動物を殺すほどの強力な毒を持っていると書かれており、木に登れば果実に毒を染みこませ、井戸に落ちればその水を飲んだ人が皆死ぬという。
 12世紀にプレスター・ジョンがビザンチン皇帝に送ったとされる偽造書簡の断片に、火中で繭を吐き出す虫「サラマンダー」について書かれた部分がある。サラマンダーの糸で織った布を洗濯するには火に投げ込めばよいという。燃えない布、火で洗濯する布についてはマルコ・ポーロの『東方見聞録』等にも見られる。これらは石綿(アスベスト)を紡いで作ったもので、マルコ・ポーロは、サラマンダーは実在しないと考えていたようだ。しかし、一般にはサラマンダーの皮として広く信じられていた。
 レオナルド・ダヴィンチは、サラマンダーが火を喰らい、その皮を再生させると述べている。
 ちなみにSalamanderは英語では両生類のサンショウウオのこと。ぬめぬめしていて、生命力が強いことから、火の中でも生きられると考えられたようである。
参考文献 幻獣辞典(晶文社) 妖精の国(新書館) 怪物のルネサンス(河出書房新社) イモリとサンショウウオの博物誌(工作舎)

文責 : さゆら
イラスト : 竜胆