夜刀の神
やとのかみ

 
容姿・特徴 頭に角の生えた蛇
出典 常陸国風土記
解説 　継体天皇の時代、常陸国（現在の茨城県）に箭括氏麻多智（やはず・またち）という者が、郡役所より西の谷の葦原を切り払って開墾し新田を作った。夜刀の神が群れをなして現れ開墾を妨害した。
麻多智は大変腹を立て、武装するとこれを打ち殺し追い払った。そして山の入り口に境界を示す杖を建て、夜刀の神に宣言した。
「ここより上は神の地とし、ここより下は人の地とする。これより私が神を祭る役となるので恨むな祟るな。」
後に、孝徳天皇の治世になり、壬生連麿（みぶむらじまろ）がその谷を占有するにあたって池の堤を作らせた。
その時、夜刀の神が池のほとりの椎の木に登って集まり、いつまでも去ろうとしなかった。連麿は叫んだ。
「この池の工事は人民のために行うのであり、どこの天津神、国津神が帝に従わぬものか。」
そして人夫に、眼に見える限りの邪魔な生物は遠慮せず打ち殺せと命令した。その後、夜刀の神は姿を隠したという。
尚、その国の人々によると夜刀の神に出会って災いを避けようとして逃げる時、振り返りその姿を見たりすると、一家は滅び子孫も絶えると言われている。
参考文献 瓜と龍蛇（福音館書店）

文責 : 真鶴
イラスト : Ｕ-ＫＩ