エインガナ
Eingana

 
容姿・特徴 虹蛇。無限の砂漠に横たわる大蛇。生き物の踵に結ばれた紐を握る
出典 アボリジニの伝承
解説 ビエインガナと呼ばれる原始の時代に存在した始祖蛇。世界や人間を造った母とされ、オーストラリアの人々に崇拝された。

何も無い無限の砂漠に飽きたエインガナは、水、石、木、風、火など世界に存在する全てを作り出し、人間を初めとする全ての生命を身ごもって水に潜った。
次にエインガナは水辺に浮かび上がるが、全ての命を身ごもった陣痛の苦しみに泣き叫んだ。その時、世界を旅していた老いた精霊バルライヤが、エインガナが転げ回り叫ぶ声を聞いてその肛門に槍を突き刺した。すると傷から血が流れ出して全ての人間が生まれた。こうして、最初は子供を口から吐き出さなければならなかった生物たちはエインガナと同じ方法で子供を生むようになったのだ。

しかし生まれた人間はエインガナに見向きもせず遠くへ行こうとした。これを見たエインガナは「お前たちが私の言う事を聞き、私の指示に従う事が私の意思」、そう言って再び人間を胎内に飲み込んだ。そして、人間と、人間の他の様々な生き物や虹蛇として吐き出して、トゥーンと呼ばれる腱で作った紐を全ての生き物に結びつけ、その端を掴んだ。
エインガナがこの紐の端を離すと生き物は死んでしまう。だから全ての生き物はエインガナを母と呼んだ。

エインガナは今でもどこかに住んでいるとされるが、その姿は誰も見る事が出来ない。
エインガナは水の真ん中の洞穴を住処とし、乾季の終わりが近づくと雨を降らし、雨季になって水が増えると大水の真ん中に立ち上がる。そして大水が引くとエンガナは帰って行く。

エインガナが再び戻って姿を現すときは、全ての生命を自由にするという。
参考文献 幻獣ドラゴン(新紀元社) オーストラリアの民話(株式会社ぎょうせい)

文責 : 白蓮
イラスト : くに