ティアマト
Tiamat
容姿・特徴
七つの頭を持つ巨大なドラゴン、或いは上半身が角を持つ女性で、下半身が蛇。
出典
アッカド神話(エマヌ・エリシュ文書) 中世ヨーロッパ文学など
解説
古代アッカドの神話に出てくる女神。
エマヌ・エリシュと呼ばれる7つの書板からなる神話に語られている、世界でも最も古い竜伝説の一つと言われている。
ティアマトは、真水の神アプスーの妻であり、苦い水(海水または塩水)の女神だったと伝えられている。その姿は、七つの首を持つ巨大なドラゴン、または上半身が美しい女性で、下半身が大蛇と言う姿で現されることが多い。
彼女は多くの神々の母となったが、若い神があまりに煩く動き回る為に、夫であるアプスーと共に悩んでいた。アスプーはやがて、生命の神であるムンムーと共に若い神を滅ぼそうとするが、その企みを知恵の神エアに見抜かれ、殺されてしまう。
その後、エアは美しきダキムナと結婚し、全ての能力が他の神々の二倍はあるといわれる軍神マルドゥークを生みだす。そのマルドゥークに恐れをなした神々が、ティアマトに助けを請うと、エアによって夫を殺されたティアマトはマルドゥークに戦いを挑む。
彼女は七つの頭を持つ蛇『ムシュマッヘ』や、毒蛇『バシュム』、蠍尾龍『ムシュフシュ』、海獣『ラハム』、巨獅子『ウガルハム』、狂犬『ウリディンム』、蠍人『ギルダブリル』などを生み出し、神キングを指揮官として神々に戦いを挑む。
まず、エアが戦ったが破れ、その後、アヌが戦いを挑むがやはり歯が立たなかった。そこで、アイシャルがマルドゥークへ支援を要請すると、マルドゥークは自らを神の王にする事を条件に、戦いを承諾した。
マルドゥークは砂嵐や暴風をまとい、嵐の戦車に乗って、怪物とキングを倒し、ティアマトと戦った。ティアマトは毒や炎を使いマルドゥークを攻め立てたが、効かず、逆にマルドゥークの嵐によって腹を膨らまされて動けなくなった所で、弓矢によって殺されたと言われている。
マルドゥークはティアマトの死骸を二つに引き裂くと、一つを天に、もう一つを大地にしたと言われている。
ただ、実際の神話には女神としてしか書かれておらず、ティアマトが竜だった明確な証拠はない。では、これがいつ頃からドラゴン化したかというと、おそらく中世ヨーロッパのキリスト教文学からではないかと考えられる。当時もてはやされた『騎士道文学』やキリスト教関連の版画に、天使ミカエルなどが、ティアマトを殺す描写がされることがある。伝承がヨーロッパに流入したことにより、正統な神話が歪められ、ドラゴン化した例の一つと考えられる。現在の日本で見られるゲームや資料本のティアマトは、基本的に中世ヨーロッパ以後のティアマトである可能性が高い。
参考文献
龍の伝説(光栄) 天使の辞典 龍の起源
文責 : 骨龍
イラスト : 七片 藍