エキドナ
Echidna

 
容姿・特徴 上半身が豊満な体付きをした美女、下半身は青黒いマダラ模様の大蛇。(説によっては禁の翼を持つとも言われている)
出典 ギリシア神話
解説  『怪物たちの母』と称される、ギリシア神話の怪物。オリュンポス12神の敵対者である、巨神族のケト・ポルキュス(クリュサオル・カリロエの子などの異説あり)を両親とし、兄弟にゴルゴンやサイレン、スキュラなどがいるといわれている。
 その名前の意味は『マムシの女』であり、黒海沿岸のギリシア系植民地からギリシア神話入りしたと思われる。しかし、源流はスキタイの女神やリビア地方の古典宗教、さらに古くはエジプトに源流を持っている地母神と考えられている。
 エキドナそのものが活躍する神話は少ない。ヘラクレスの愛人になったり、ヘラと敵対するなど、神々の敵対者としての相が強い。 住処はアルカディア・キリキア・小アジア・黒海沿岸など、多くの説があるが、基本的には火山地帯の海に近い洞窟だったといわれている。ギリシア神話の成立に重要な役割を果したホメロスは、エキドナの住処を『テュポエウスの住処』と名付け、神も人も近寄らないと書いている。
 台風の神でありギリシア最悪の魔神テュポーンと交わり、多くの怪物を生んだといわれ、その中には、有名なオルトロスやケルベロスなども含まれる。その最期はヘラの命によりエキドナの前に現れた百眼の巨人アルゴスにより、眠っている最中に殺されたといわれている。
中世ヨーロッパでは、このエキドナの姿や、近親相姦さえ厭わぬその性格を原型とした男を誘惑する蛇のイメージが生み出されたようだ。そのため、エキドナは売春婦の象徴としても扱われる。また、スペンサーの『妖精女王』では、100の舌と一本の長い牙を持つ魔物の母親とされた。
参考文献 ギリシア神話小事典(教養文庫) 悪魔の辞典(青土舎)

文責 : 骨龍
イラスト : ドーモ