ヴァジェト
Wadjet
容姿・特徴
白か赤の冠を被ったコブラの頭の女性。またはコブラ。
出典
エジプト神話
解説
ワージェイト、ウアジェト、エジョ(Edjo)、ウジョ(Udjo)などとも表記される。ギリシャではブト。
名前は「緑」と同義語のパピルスを意味する古い語からきており、「パピルスの女」「緑のもの」「力強いもの」の意。「デプ市の女主人」「炎の偉大なるもの」とも称される。
時には獅子の姿で現される事もあり、例外的に雌のハヤブサの姿にもなった。
標識は下エジプトの冠、ウアジェ(パピルス)の円柱、メニト。元素は水と火であり、色は緑、神聖動物はコブラ、雌ライオン、エジプトマングースである。
もとは下エジプトの首都ペル・ヴァジェト(「蛇の宮殿」)、デルタ地帯のブートの町とその周辺を起源とし、その場所を中心に信仰された下エジプトの守護女神であった。
イメト(現代のテル・エル=ファラウン)にいくつかの聖域を持っていたが、主要な聖域はペル・ヴァジェトである。
後に、争っていた上エジプトと下エジプトが統合されると、上エジプトのハゲワシの女神ネクベトと共にファラオの左右を守護するようになった。
コブラと、コブラを食べるハゲワシの女神は上下のエジプトの勢力争いを象徴していた。
悪しきものを倒す強力な毒を持っており、その焼けるような毒が炎に例えられたため「炎の女神」とも呼ばれている。
その毒は悪しきものの命だけを奪い、善人を傷付ける事は無かったという。
時折、ラーの娘と呼ばれるが、ヴァジェトの親子関係は知られていない。慈悲深さからイシスと同一視され、伝承ではブート近くのヘンシスの沼でホルスの乳母となった。
ウラエウスや他の蛇女神とも関連しており、神話で大きな活躍は見せないものの、王を守護し悪しきを退ける女神として敬愛されていたようだ。
参考文献
幻獣ドラゴン(新紀元社) エジプトの神々事典(河出書房新社)
文責 : 白蓮
イラスト : G.River